オリンピックさんで開発されたフリーパワーという電池の要らないアシストクランクをハチワレサイクル的に解説してみたいと思います。たぶんどこよりも詳しいはず。
フリーパワーとは?
【メーカー説明を要約】
フリーパワーとはギアクランクに仕込まれたシリコンをつぶした反動でアシスト機能を得られるという画期的なアシストシステム。充電不要でアシストし、膝に優しい特性をもつ商品。
ペダリング中にシリコンに動力をため込み、一定のタイミングで反発させて動力を生み出す仕組みということ。
そんな消費者意識をうまくくみ取り、その願いを叶えるかのように登場した画期的商品。
※↑この図はイメージです。実際の特性は後ほど詳しく解説!
テレビで見てこんな感じだと想像している方いませんか?実は私もそうでした。
坂道もスイスイ電池なしで登れるならと気になっている人も多いのではないでしょうか?
つけたいけど、どんなものかわからなくて困ってる人も多いのではないでしょうか?
今回、たまたまフリーパワー搭載車両が修理に持ち込まれ、オーナーさんもOKだったので修理後にしばらく乗らせて頂いたので、フリーパワーとはどんなものか紹介してみようと思います。
搭載フリーパワーは36丁165㎜クランクに強度70というもので、フリーパワーの中では弾力が強めで反発力も高いとのこと。フリーパワーが一万円くらいで工賃が3000円位だったそうです。
果たして、本当にテレビみたいに電動アシスト並みのパワーを体感できるのか?
皆さん一番気になるところではないでしょうか?
早速結論で申し訳ないのですが、
電動アシストのようなアシストはしません。
結論から申し上げますと、電動アシストとはまったく違います。
※後ほど詳しく解説しますが、フリーパワーのアシストには勘違いによる誤解があります。
電動アシストのような漕ぐと同時にモーターがサポートするような手厚いアシストはありません。
電動アシストのアシストはモーターの力で実際にチェーンを回します。ペダルがどの位置にあろうがアシストしてくれます。後述しますが、フリーパワーにはそのようなアシスト機能はありません。
テレビを見て、すごくペダリングが軽くなるようなアシストを期待されているなら大間違い、期待外れになること間違いなし。
電動アシストを知らないヒトならこれがアシストだと勘違いしてしまうかもしれません。
テレビではあんなに軽いとか言っていたのに、おかしいですよね?
テレビは売り出しのための演出で、プラシーボ効果とも言えます。あのイメージで買おうと思ってる方はこの先も読むと目が覚めます。
じゃあ、ここからはフリーパワーの真実を公開していきましょう!
勘違いを解くと言った方がいいのかな?
超現実的、フリーパワーの仕組み
ギアクランク側に取り付けられたシリコンを漕ぐ力で潰し反発力を作って動力に変換するという仕組み。
カンタンに言うとペダルをこぐ間にため込んだ力を一定のタイミングで開放して動力にするというものです。
はい、ここで大きな勘違いが生まれます。
そう、思ってしまいませんか?
私も乗ってみてあれ?押さへんやん?と思いよくよく調べてみると違うんですね、仕組みが。
アシストを期待したタイミングでシリコンの力が逃げてしまって動力変換されないのです。
あれ?なんで?アシストでしょ?と疑問に思うこと数分走行し、答えがわかりました。
正解はこうです↓
シリコンを押しつぶした力が開放されるとき、我々がペダルを踏み込む足がすっぽ抜けて素早く踏み込めるので普段より強くペダルを踏める!
そう、これがフリーパワーのアシストの正体。
はい?わかりにくいのでもう少し説明!
実はフリーパワーでアシストされるのは自分が踏み込む足(ペダリングの力)だったんです。シリコンが反発して動力を生み出すわけではありませんでした。これはあのテレビ番組を見ているヒトなら誰でも勘違いしてしまうのではないでしょうか?
実際私も、シリコンが反発する力がチェーンに伝わり動力を生み出すと信じてました。
超わかりやすい絵で説明しましょう↓
シリコン潰したままペダルが上死点までくると、シリコンにため込んだ力が抜けます。
力が抜けた瞬間、我々のこいでいる足のほうが加速してペダルを踏み込むので、勢いよくペダリングできる。
これがフリーパワーでいうアシストの正体です。
明らかに電動アシストのアシスト方法とは違いますよね?
※メーカーHPの仕組みにはものすごくカッコよく書いてあるのでシリコンの反発がグイグイ推進力を生むイメージを持ちますが、原理がわかると確かにメーカーHPも間違ってないと気づけました。
「自分の足でシリコンをつぶしていた力を抵抗が抜けた瞬間に開放するアシスト」とは書けませんよね。
仮にシリコンの反発がギアに伝わってチェーンに動力が伝わるなら漕いだ足を反発のタイミングでストップさせてもぐいっと行くはずですよね?
残念だけど、それは感じない。
私はその感覚をつかむためにどれだけ走行したことか。
どうやったらシリコンの恩恵を受けらるのか!とオジサンが必死になって街を走る姿を想像できますか?
結局、感じるのは自分の足がすっぽ抜けて次のこぎ足しが力強くなる感覚だけ。
でもそれこそがフリーパワーなのでしょう。
気づいてからはとても面白いギアだと感じ、そういう乗り方をすれば確かにアシストですねとニヤニヤしていました。
もし、いや違いますよ!シリコンが反発して動力を発生させてます!と言うならば失敗作と言わざるを得ない。
購入検討されている方はアシストの仕組みを理解してないと、【思ってたんと違う】となること間違いなし!
試乗レベルですと、踏み心地の柔らかさと何となく変な感じがする漕ぎ心地で「これがアシストか!」と勘違いしてしまう方も居そうですが、しっかり仕組みを理解して使いこなさないとフリーパワーの恩恵は受けられません。
自転車を楽に漕ぎたいのであれば、電動アシストの方が楽です。何も考えなくても全周囲のペダリングをモーターがアシストしてくれます。
フリーパワーは右クランクの上死点のみでフリーパワーが発生します。常にアシストはしませんので注意!
ペダリングうまいヒトは常にシリコンにチカラをキープしてしまうのでパワー生まれませんから要注意!
電動アシストとは違うけど、なんとも面白いことを考えたなぁと関心しましたが、これって、アシスト?アシストって言っていいの?まあでも自分の足をいつもより早く回転させるシステムなのでアシストと言っても良いのでしょう。
でも結局、自分の力じゃん…と思えてしまい評価がむずかしいアシストなのは間違いなし。
フリーパワーは電動アシストのような漕ぐ力に対してモーターが踏力感知してアシストしてくれるような仕組みではないことを理解しましょう!
余談ですが、モノを押している力を急に開放すると勢いよく飛び出す力の作用を何と呼ぶのか、名前があるのか検索しましたがわかりませんでした。(すっぽ抜け原理とか検索しました。)
なので私はこの力の作用を「フリーパワー」と呼ぶようになりました。
超余談でしたね…
フリーパワーは扱うのが難しいギア
フリーパワーは自分の足が投げ出されるタイプのアシストなので緊張と緩和を使いこなす必要があるギアです。これはこれで使いこなせたら面白いギアですが、使いこなすのは難しいと言わざるを得ない。
まず、ゆっくり走ってる時は効きが弱い、当然反発がすくないのでただふにゃふにゃした踏み心地になるだけ。
タイヤが20インチとか小さいとペダリング間隔が早いので潰れたシリコンの抜け感が感じにくい、(お客さんと乗り比べできるほど暇だった。)効いてるか効いてないかわかんないレベルになる。
外装6段の3速まではギアの力も強いので力が抜けた後の勢いで踏むとぐいぐい行く感じがするんでしょうね。結構楽しかったです。
思わず、「ああ、これはこれで楽しいなぁ」と感じたほどです。
ただし、踏む力に対して常時アシストではないことと、ため込んだ力がうまく抜けないと効果がないことなど、恩恵を得るのはなかなか乗り方が難しいと思いました。
自分が欲しいアシストとは何か?で選択肢は変わる
コツをつかんだ上で乗れれば面白いんですが、それは皆さんが思い描くようなアシスト車に乗っている生活なのでしょうか?
たぶん、違いますね。
漕ぐと自然にアシストしてくれて、スイスイ走れる。そういうアシストが欲しいなら電動アシストがおススメ。
電動アシストみたいにスイスイ漕げるアシストは不要だが、普段の自転車にプラスアルファして楽しく漕ぎたい!とか膝が痛いから膝に負担の無い自転車が欲しい!という方はフリーパワーがおススメです。
今の自転車が重いからフリーパワーで軽くしたいという方
ここまで読んで頂いてもうそれは見当違いと感じていることでしょう。
自転車が重いから軽く漕ぎたいということでフリーパワーを検討しているなら、まずは今の自転車に空気を入れるところから始めましょう。
自転車が重くなる原因の8割が空気圧不足ですから!しっかり空気を入れれば本来の軽さが戻ってきます。
騙されたと思ってまずは空気をいれましょう!
フリーパワーの利点
膝に優しい。
ハチワレサイクル的にフリーパワーの最大の利点だと感じたのは膝への負担軽減。結構乗っても太ももや膝に影響が少ない。ふつうこれだけこげば太ももパンパンになるのにねって漕ぎ方をしても足への負担が少ない。
これはすごいですよね?アシストするしないにかかわらず、足が疲れにくいのは大きな利点です。
本来はこれが最大の利点なのでは?メーカーはアシストより膝への負担を第一に掲げた方が良いと思います。
長距離乗る場合や、膝が痛い方にはおススメできる。
アシストとか難しいことは切り捨てて、膝ファーストな方にはおススメ出来ます。膝に爆弾抱えてんだよ!って方は是非試乗してみましょう!
フリーパワーのデメリット
アシストを期待して買おうと思ってるのにアシストは結局自分の足が投げ出されるだけな点
そしてその機能に1万円を払うのか、悩ましい。膝には良いんですけどね…今よりダメになることは無いのですが、良くなったと感じるかどうかはその人次第。
アシストする仕組みをうまく使って狙ってアシストを発生させるという意識がないと買っても無駄になる可能性大。
小さい車輪の自転車には恩恵無し。
20インチの折り畳みなどはもともとトルクのお化けみたいなギア比、それに加え前ギア小さいとペダリングもせわしないので抜け感を感じる暇がないので「?」がいっぱいになります。
坂道が楽になることはない。
これも気になるところではないでしょうか?
坂道は常に踏みっぱなしなのでペダリングがうまいヒトはずっとシリコン潰したまま乗ってしまうので抜け感からの加速した踏み込みなんてできません。
私、近くのショッピングセンターの2階駐車場へのスロープ坂道を登ってきましたが、全然楽ではありませんでした。
踏み込んだ足と反対の足でペダルを引いて動力を切らさないようにする引き足使うとずっとシリコン潰すので、坂道でフリーパワーを使う余裕なんてありませんでした。一瞬力が抜けると困る坂では使い物になりません。
テレビでスゴイ!楽!と連呼していたアレは何だったんでしょうね?期待して登ったらひどい目に遭いました。
というわけで、
坂道も期待しない方が良い。
取付の注意点
取扱店のみ取付作業が可能なようです。講習受けてからじゃないと取り扱いできないらしいですね、個人での装着は推奨されてません。必ず取扱店でやりましょう!
当方取り扱い店ではないので言いにくいのですが、チェーンケースとギアクランクが干渉する自転車には取付できません。
全ケースと言ってチェーンをケースですっぽり隠すような自転車はチェーンケースごと取り払わないとつけられないので、工賃が高くなると思います。
半ケースなら取付られる可能性は高いですが、ギアの歯の数が大きく違ったりすると無理でしょう。36丁には36丁のフリーパワーが必須。
必ず取扱店で、装着可能か診断してもらいましょう!
まとめ
ガッチリマンデーの記憶はいったん消去しましょう。
あれを鵜呑みにしては正常な判断ができません。
おそらく、過剰な演出でフリーパワーの中のヒトも困っていると思います。電動アシスト並みのアシストをするような商品ではありません。
アシストメインで考えているなら電動アシストと乗り比べを激しくお勧めします。
電動アシストを知らずにフリーパワーだけ試乗しても混乱するだけです。
フリーパワー扱い店は試乗できる場合が多いので是非試乗しましょう。
電動アシストも置いてる店なら是非電動アシストも試乗しましょう。
批判的な記事もありますが、しっかり特性を理解して乗りこなすのも面白いと思います。
ただしこれは変態な領域だと思います。趣味嗜好の話ですね。
私は外装6段ギアに装着して1速から3速あたりで漕ぐのが楽しくて追求の余地があるかもしれないと本気で思いました。
電動アシストとは全然違いますが、これはこれで面白い乗り心地になります。
1万円で試すほどのものかというのが大問題ですが、そこは試乗して判断するしかありません!
この記事では、フリーパワーのアシストの仕組みを理解して頂いて過度な期待をしないように注意喚起出来たら幸いです。
間違っても1万5千円くらいで電動アシスト並みの恩恵を受けれると思わないでくださいね!
以上
ハチワレサイクル的にはフリーパワーの次回作に期待しています。もっとできるのでは?ギア比とか前後のバランスを詰めて超楽に漕げるような変態ギアを期待しています。
フリーパワーの中の方々、記事中に間違いがあればご指摘くださいませ。
ここまで読んで頂きありがとうございます!他の記事も面白いんですが(自爆)あまり読まれていませんので皆さんお時間ありましたら、応援お願いいたします!